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連載
『ハッセルブラッドに恋をした』
今日でついに最終回となりました。


商品のことはその気になればいつでも書けますが
こういう企画でもない限りなかなか実現できないことをやろうと思います。


最終回の今日は、スペシャルゲストへの取材記事です。


伺った先は、
うちのお店がハッセルブラッドの修理をお願いしている職人さん、
ワタナベカメラサービスの初見さんです。


普段なかなか伺うことのできないちょっと突っ込んだお話。
ワタクシも興味津々でお話をお伺いしてきました。

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そもそもなぜカメラ修理の世界へ?


この問いに、初見さんは少し間をおいて
「貫井(ぬくい)って知ってる?」
という質問を僕に投げかけてきました。


貫井さんという方は知る人ぞ知るカメラ修理の名人で、
貫井さんに弟子入りをして技術を磨いた方も多くいらしたそうです。
初見さんも親戚の縁で、貫井さんの門を叩くことに。


「最初はリコーフレックスとかも修理してんたんだよ」


これはちょっと意外でした。
最初はハッセル専門という訳ではなかったのですね。


「そのうち、シュリロと共同通信社の担当になってさ」


今でもシュリロ貿易はハッセルとリンホフの代理店ですが、
当時は他にエギザクタなども取り扱っていたそうです。


「だからエギザクタの修理が入ると『初見くん得意だからこれをやりなさい』なんて言われて、たくさん直したよ」


シュリロからのハッセル・リンホフ・エギザクタの修理、共同通信社の報道カメラの修理をこなし、
修理の経験を積んでいったそうです。

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シュリロ入社


「東京オリンピックの年に、シュリロに入ってさ」


?修理部門として入社したということですか?


「いや、営業でね。広い世界を見たくてさ」


なんでも当時のシュリロ貿易は
ペンは「パーカー」、時計は「IWC」、靴は「・・・」忘れてしまったそうですが(笑
カメラは「リンホフ」「ハッセル」と、各方面の世界の一流品を扱っていたそうです。


「扱わないのは棺桶だけ、なんて言っててさ」


初見さんがシュリロで営業を始めた最初の年は「リンホフ」「ハッセル」はほとんど売れなかったそうです。


「高過ぎたんだろうね」


1964年当時、大判カメラのリンホフが30万円、中判カメラのハッセルが25万円。
高卒初任給が1万5千円くらい。大卒で2万円くらい。


丸1年分の給料を、全く手をつけずに貯めても買えない代物。
それがハッセルブラッドだったそうです。


「でも次の年から急に売れてさ」


オリンピックによる特需もあり、時代が変わったのでしょうか。


「ほとんどのスポンサーが『国産の中判カメラじゃダメだ。ハッセルを持ってるカメラマンにしろ』って言ってさ」


シュリロも業績が好調で、本国ハッセルブラッド社を見学する社員旅行をしたそうです。
その時、現地に行った初見さんはハッセルのリペアルームが気になって、そこばかり見ていたそうです。


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再び修理の道へ


「結局3年で辞めちゃったね。え?だって営業は誰だってできるじゃない」


そして、貫井さんの元で技術を磨いた渡邊さんが独立して興した修理会社
「ワタナベカメラサービス」に入社。


それから約10年後


1978年に本国のハッセルブラッド社で「ディプロム資格」を取りました。
ディプロム資格取得者は本国でも数少ない難しい資格であり、日本人では初見さんが唯一の存在です。


初見さんは、使用者の立場に立って修理をしてくれる、ありがたいお方です。


ダメなところはダメ「ここまでの修理が必要」
逆に修理する必要のない時は「ここはまだやらなくていいよ」


腕の確かさだけなく、そういう正直なところも初見さんの魅力でしょう。
お話ししていると気さくで暖かな人柄に、自然と安心感と信頼感を覚えます。


腕と人望で、多くのカメラショップやプロカメラマンが信頼を寄せる修理職人、
そんな「マイスター」が初見さんなのです。

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初見さんに質問をしてみました。



・OHなどは定期的にやった方がいいですか?

「調子が悪くなったり、気になるところがあったら悪いところを修理すればいい。
『何年に一度』って言って、定期的に無駄な修理をする必要はないよ」



・僕らが使う上で、注意することってありますか?

「レンズを外す時に、うっかりシャッターボタン押しちゃう人がいるから、気を付けて(笑)」



・どういった修理が一番多いですか?

「シャッターを半押しすると動きが止まっちゃうんだけど、ほとんどそれだね。8割方、それが原因」



・それはどういう理由ですか?

「写真撮る時にシャッターをズボっていっぺんに押さないで、シャッターをそろーって押すでしょ?
無意識でも半押しみたいにカチャカチャて。
そうすると内部のギアのね、かみ合いが少しずつずれていっちゃうんだよ。
で、シャッターボタンを押すと中途半端なところでギアが止まっちゃう」



・つまりシャッターを切る時は潔く押せと?

「そう。パッと押して、パッと離す。そうすればそんなに壊れないよ」



・他にはどんなものがありますか?

「うーん。あとは油かな。粘っちゃったり、逆に抜けちゃったり。それは古い油を流してあげないとダメだね」



・シャッターを巻き上げた方がいい説と、巻き上げない方がいい説がありますが、職人さんから見てどうですか?

「巻き上げておけばいいよ。2 ~ 3年シャッター切らないっていうなら別だけど」



・500Cの時代は作りが頑丈だと聞きますが、それについてはどうですか?

「あー、頑丈だね。スウェーデン鋼ってやつ?ヤスリが歯が立たないようなのもあるくらい(笑)」



・ちなみに初見さんの愛機って何ですか?

「500CMを2台使ってるよ。80mmと、・・・150mm・・・だったかな?」
「あと、CANONのレンジファインダーに19mm付けたやつと、PENワイド」



・最近の修理事情ってどうですか?

「若い子が増えたね。とにかくハッセルも安くなったからね」



・実際に当時営業されていた初見さんがおっしゃると説得力が違いますね(笑)
ありがとうございました。


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*半押しがダメな理由を図に書いて説明してくれる初見さん。







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普段直接関わることの少ない修理職人さんですが、このような機会に
少しだけでも人柄を知ることができると、ますます安心できませんか?


初見さん。
これからもハッセルユーザーのサポートを、よろしくお願いします。

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これにて連載『ハッセルブラッドに恋をした』は終わりになりますが、
面白い記事が書けそうになったら、またひょっこり登場するかもしれません。


その時をお楽しみに。


長期連載、お付き合いいただきありがとうございました。


(タドコロ)


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