こんばんは、タドコロです。

昨日書いたようにローライ35を紹介して行きたいのですが、
「そもそもローライ35って何?」
って言う人もいるのではないかと思います。
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まずはローライ35とは何ぞや、というところをお話ししてみます。

今日はちょっと長いですよ。頑張って読んでみて下さい。


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1959年からオリンパスが発売していた、小型のハーフカメラの「ペン」シリーズが世界的大流行をしていた時代。
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デジタル全盛の今でこそ『カメラ』と言えば『日本』ですが、
フィルムカメラ全盛のこの時代は『カメラ』と言えば『ドイツ』でした。

そんなカメラ大国ドイツにも、この頃からジャパンカメラの脅威は着実に浸透し始めていました。
そういった状況下で、ローライフレックスなどの二眼レフカメラで有名なドイツの名門メーカー
『フランケ・ハイデッケ社』がコンパクトカメラを発表しました。
1967年発売当時、世界最小カメラとして発売されたのが、この「ローライ35」でした。





「ペン」はハーフカメラということもあり本体を小さくすることが可能でしたが、
「ローライ35」は通常のフルサイズカメラなのに「ペン」よりもコンパクトにできた、
という点が当時はまず驚きだったようです。

「ローライ35」と「ペン」を比べてみると、こうなります。
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左:高さはほぼ一緒。
中:厚みもほぼ一緒。
右:横幅はローライの方が小さい。





ここまでコンパクトにすると、何かしら機能が損なわれてしまいそうなものですが、そこはさすが名門です。
『カールツァイスのレンズ』・『ゴッセンの露出計』・『デッケルのコンパーシャッター』と、
それぞれに当時のドイツの一流メーカーを採用するあたり、抜かりはありませんし、
ここに「ローライ35」に対するの本気度がうかがえます。

これだけの作りをしているので、当然値段は高いものでした。
1967年当時、発売価格は69000円。大卒の初任給が25000円の時代です。
現在の価格に置き換えると、約55万円。
(ちなみに昨年「Rollei classics」というものが復刻されましたが、売価はやはり50~60万円くらいです)

・・・なんたる高級品。

この、贅を極めたコンパクトカメラ。
一体どんな構造をしているのでしょうか。





このカメラを見た時にまず、デザインの良さがあげられると思います。
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左右対称の非常にバランスの取れたデザインで、
初めてこのカメラを見る人もたいてい「デザインが良いカメラ」だと口にします。

小さい長方形の箱の中央にレンズとダイヤルが並んでいますが、
このデザイン、長年二眼レフを作ってきた『フランケ・ハイデッケン社』らしさが滲みでているように感じます。
二眼レフカメラも同じようにバランスの取れた、端正なスタイルをしているからです。






次に目がいくのが、カメラのレイアウトです。
普通のカメラだとカメラ上部にある、
『巻き取りレバー』・『カウンター』・『ホットシュー』が全て底面に配置されています。
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代わりに上部には、
『露出計』・『シャッター』・『巻き上げレバー』・『レンズ収納ボタン』が配置されています。
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さらに実際カメラを構えて気付くのは、
『レンズ部のピント合わせ』・『レンズ横に付いているシャッタースピード・絞り』の設定が
“カメラを構えた状態で上から見やすいような向きで数値が配置されている”ことです。
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つまり、撮影に必要な情報しか見えないようになっているのです。

被写体を見つけたら『露出計』に従って『シャッタースピード』と『絞り』を決め、
『ピント』を目測で合わせたら、後は『ファインダー』をのぞいてフレーミングをして、
『シャッター』を押すだけ。

“ムダのないシンプルな操作”で、このリズム感は撮影時に心地良さを感じさせます。






露出計用の電池は、裏蓋を開けた中にある電池室に入れるのですが、
ここでも1つ気付くことがあります。
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電池室の蓋には凹みがあるのですが、その蓋の凹みにフィルムの頭の凸部が丁度はまるようになっていることです。

露出計の電池を収めるためにどうしてもネジは必要ですが、そのネジ蓋をここまで上手く利用したカメラは他にないんじゃないでしょうか。

これにより“カメラの高さを極限まで抑える”ことに成功しています。






また、「ローライ35」を使う上での大きな特徴は、レンズが沈動収納式だということです。
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これは何故にこんなことをするのかと言えば、『良いレンズを使いたい』この一言に尽きるでしょう。

組み込み式のレンズにしてしまうと、どうしったて設計に制限がかかり、それなりのものしか作れない。
『どうせなら良い設計のレンズを使おう』という気概の現れだと思います。

でもそのレンズをそのまま使うと飛び出してしまうし、
世界最小という謳い文句にも「?」が付きます。

そこで沈動収納方式を採用したのでしょう。

そこまでこだわったレンズなので当然、“写りは超一級品”です。
カメラマニアの方々もご納得の描写力を誇ります。






この様に一風変わったレイアウトのカメラなので、人によっては使いづらいということも言われるカメラですが、
僕はここに、設計者の明確で強い意志を感じずにはいられません。


『世界最小』
当時コンパクトカメラが流行っていた時代、ドイツカメラを復権するために、技術力を見せつけるために、
これを実現することが「ローライ35」の第一目標だったはずです。

そこに欲張ってアレやコレや機能を付け加えると、
何がなんだか分からないものに中途半端なカメラなってしまったはずです。


おそらく「ローライ35」は『スナップカメラ』としての明確な位置付けの基に、
作られたのではないか
とおもうのです。


スナップカメラでは滅多にフラッシュなんて使わない。
フィルムカウンターもいつも見る必要はない。たまに見るだけで良い。
巻き取りレバーなんて、撮り終わるまで使わない。
広角気味の写りの良いレンズを使って、絞りを絞って使えば、目測でも充分ピントは合う。


こう考えると、あの一件ちょっと変わったレイアウトも、全てのつじつまが合うのです。






唯一の欠点だと言われている「ピント合わせが目測式」という点も、
絞りを『F8』よりも絞ってあげれば解決します。

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ピント表記を見てみると、『3』を境に『2』と『6』が赤くなっているのがわかります。
(feet表記の場合は『10』を境に『6』と『20』)
これは『3m』を境に『手前なら 2』か『奥なら6』か、だけを見てあげたらどこにでもピントが合うようになっています。
さらに『F16』『F22』まで絞ってしまえば、『3』に合わせておけば無限遠まで撮れてしまいます。





アメリカのカメラのような、作り手主体の合理主義とは違う(笑)、実用本位に基づいたストイックなまでの合理性。
ドイツ人が本気を出して物を作ると、恐いくらいにスゴい物ができあがります。




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↑ 昔、andyさんと一緒に作ったもので、ちょっとおかしなテンションで書いていますが・・・(笑)



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『世界最小』
そこに詰め込んだ大きな夢は時を経た今なお、人を魅了させる力を持っています。

デジタル全盛のこの時代に復刻版が出るほどに、長年に渡り愛され続けている「ローライ35」

新品で買うのはなかなか現実的ではありませんが、このようなロマンを手頃な値段で買えてしまうのも、クラシックカメラならではの魅力ではないでしょうか。

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